山へ

「山へ行きたい」と
ばぁちゃんは言う。
山にはじぃちゃんの眠るお墓があって
ばぁちゃんは そこに入りたいんだ。

「ばぁちゃん、今は雪が深いよ。春まで待とうよ」
と言っても
「山へ行きたい」 の繰り返し。

「じじ(ばぁちゃんの父親)が来た」
「腹いっぱい食べて来いって言った」

「みんな来るんだぁ」
「ほれ、あの雲と雲の間から」
「みんな見てるんだぁ」

もう、多分 精一杯生きたということなのだろう。
生きることに疲れた人に
頑張れとは言えない。
もう少し元気に居て欲しいと思うのは残される者のエゴなんだろう。
ご飯も食べられなくなった。
点滴も毎日。
延命治療は希望していない。

あとどのくらい・・・?

今日も雪が降っています。
春はまだ遠い。